セル・シュール・シェール

セル・シュール・シェール
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    セル・シュール・シェール(Selles-sur-Cher)は、フランス中部サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏のシェール県・アンドル県・ロワール=エ=シェール県にまたがる地域で作られる山羊乳(無殺菌乳)のシェーブルチーズです。
    名前はこのチーズが誕生したロワール=エ=シェール県のコミューン「セル・シュール・シェール(Selles-sur-Cher)」に由来しており、ロワール川の支流であるシェール川のほとりに位置するのどかな小さな町の名を冠しています。

    19世紀にこの地域で初めて作られ、1975年にAOC(原産地名称管理)認定を取得。現在はEU統一のAOP(原産地名称保護)として保護されているフランスを代表するシェーブルチーズのひとつです。
    底面の直径約8cm・高さ約2〜3cmの低い円錐台(切り株)形が特徴で、重さは1個約150g。1個を作るのに約1.3リットルの山羊乳が必要です。農家生産(フェルミエ)・協同組合・工業生産の3タイプがあり、2005年の生産量は747トン。春から秋にかけてが最もおいしい季節とされます。

    最も目を引く特徴は、表面を覆うポプラの木炭と塩を合わせた炭の粉(cendres de bois)です。この炭の粉は単なる見た目の演出ではなく、雑菌の増殖を抑制しながら適度に水分を保持するという機能的な役割を担っています。外側の炭が均一に乾燥を促しつつ、内部には適度な水分が保たれるため、チーズが均一かつ美しく熟成されます。

    木炭コーティングとロワール産シェーブルの仲間

    セル・シュール・シェールが属する「木炭をまぶしたシェーブルチーズ」というスタイルは、ロワール地方特有の伝統的な製法です。同じくロワール産のAOP認定シェーブルチーズであるサント・モール・ド・トゥレーヌ(藁を芯に通した丸太形のシェーブル)やヴァランセ(ピラミッド形の木炭コーティングシェーブル)も同様の炭をまぶす製法を採用しており、これらは「ロワールのシェーブル三兄弟」とも称されることがあります。
    一方、炭をまぶさない同地域のシェーブルにはクロタン・ド・シャヴィニョル(小さな球形)やプリニー・サン・ピエール(細長いピラミッド形)があり、ロワール地方はフランス屈指のシェーブルチーズの産地として知られています。

    セル・シュール・シェールはその中でも比較的円盤に近いフラットな形状で、切り分けやすいことからチーズボードや料理での扱いやすさという点でも高く評価されています。
    製法的な特徴として、カードをレンネットで固めた後に型に直接ラドル(お玉)でそっとすくって入れる点があります。多くのチーズでは圧搾や型詰めの際に力を加えますが、セル・シュール・シェールはこの丁寧な手作業によりきめ細かな質感が保たれます。型に入れた後は80%という比較的乾いた環境(通常のセラーは90〜100%)で10〜30日間熟成させ、その過程で炭の粉が外皮の形成を助けます。

    セル・シュール・シェールの写真

    フロマージュミナミ 静岡本店で購入、2014年10月当時1個で税抜1,580円でした。
    クロタン・ド・シャヴィニョルも一緒に購入しました。

    味と食べ方(ペアリング)

    外皮はグレーブルー〜灰色で乾いた質感、中の生地は白くきめ細やかです。熟成が進むにつれて表面に細かいシワが入り、より複雑な風味になります。

    若くフレッシュな状態では、さわやかな乳酸の酸みとほんのりとした甘みが主体で、軽くクリーミーな口当たりが特徴です。山羊乳特有の「バルヌ(納屋)」の香りはフレッシュな段階では控えめで食べやすいため、シェーブルチーズ初心者にも向いています。
    熟成が進むと生地が引き締まり、ナッツのようなほっくりとしたコクと風味が増して、より複雑な旨みが感じられます。外皮に含まれる炭の部分には独特のほんのりとした苦みがあり、中の生地と一緒に食べることで風味のコントラストが楽しめます。

    表面の炭の粉はポプラの木炭と塩を合わせたもので食べても問題なく、外皮ごと食べるのが一般的な食べ方です。バゲットやクラッカーにそのまま乗せたり、薄切りにしてサラダのトッピングにするのが定番です。
    相性のよい食材として、くるみ・ヘーゼルナッツなどのナッツ類、レーズン・ドライアンズ・ドライイチジクなどのドライフルーツ、フレッシュフルーツ(洋梨・ぶどう)との組み合わせが楽しめます。蜂蜜(特にアカシア蜂蜜)をほんの少し垂らしてもシェーブルの酸みと甘みが調和してよく合います。

    ワインとのペアリングは、同じロワール地方を代表する白ワイン「ムスカデ」「ソーヴィニョン・ブラン」「サンセール」「プイィ・フュメ」が地元産同士の相性として最高です。特に辛口の白ワインはシェーブルの酸みと風味を引き立てる定番の組み合わせです。
    熟成が進んだものには軽めの赤ワイン(サンセール・ルージュ、シノン、ブルグイユなど)も合わせやすく、チーズのコクの増した風味と対話するような楽しみ方ができます。

    購入店

    • フロマージュミナミ 静岡本店(2014年10月)
    分類
    🧀シェーブルチーズ🧀ナチュラルチーズ🇫🇷フランス🐐山羊(ヤギ)